主役だからといって、
いつも前に出ればいいわけじゃない。
ときには、ほかの花の中にそっと身を置くことで、
その存在がいっそう美しく見えることもある。
今回ご依頼いただいたのは、
占いのお店に飾るフラワーアレンジ。
「アナスイをイメージして」
そんなご希望から、
リースとバスケットアレンジの
ふたつの作品を制作しました。
アナスイといえば、黒、紫、ピンク。
少し妖艶で、ミステリアスで、
それでいてどこか可愛らしい。
そんな世界観を、お花で表現してみたいと思いました。
今回の主役は、黒い薔薇。
「黒い薔薇を主役にしながら、
黒が主張しすぎないように」
黒い薔薇は、それだけでも十分な存在感があります。
だからこそ、あえて前に出しすぎず、紫やラベンダー、ピンクの花たちの中へ。

それぞれの花が自然に寄り添うように、色を重ねていきました。
黒があることで、紫の深みが引き立ち、
紫があることで、ピンクの甘さが際立つ。
そして、ピンクやラベンダーの柔らかさがあることで、
黒い薔薇も、少し優しい表情になる。
ひとつひとつの花が主張するのではなく、みんなでひとつの世界をつくっていく。
そんなイメージです。
リースは、
紫やブルーの花を軽やかに散らしながら、ところどころに黒い薔薇を。
ふと目に留まる黒が、
全体に少しだけミステリアスな空気を添えています。
バスケットアレンジは、
黒い薔薇を中心にしながら、
ピンクやラベンダーの花をふんわりと重ねて。
リースとはまた違う、
華やかさと可愛らしさを感じる仕上がりになりました。
妖艶だけど、可愛い。
華やかだけど、少しミステリアス。
そんなアナスイの世界を、お花でそっと描いたふたつの作品です。
そして、花を作るときに私が大切にしているのは、
お花そのものだけではありません。
その花が、どんな場所に飾られるのか。
そこに置かれたとき、どんな空気をつくるのか。
そこを想像しながら、花をひとつずつ選び、配置していきます。
今回の作品も、
占いのお店を訪れた方がふと目にしたとき、
「なんだか素敵」
「このお店の雰囲気に似合っている」
そんなふうに感じていただけたら嬉しい。
花をきれいに作るだけではなく、その花がそこにある景色までつくる。
そこまで含めて、
ひとつの作品なのだと思っています。
黒い薔薇も、
紫の花も、
ピンクの花も。
どれかひとつだけが目立つのではなく、それぞれがそれぞれの場所で美しく咲いている。
そんな花たちを眺めていると、
お花の世界って、なんだか人の世界にも似ているなと思います。
いつも前に出なくてもいい。
そっと誰かの隣にいることで、
その人の魅力を引き立てることもある。
そして、自分自身もまた、誰かにそっと支えられているのかもしれません。
今回のオーダーから生まれた、黒い薔薇をそっと主役にした花たち。
そこには、
妖艶さと可愛らしさ、強さと柔らかさ。
いくつもの表情が重なっています。
そしてそのすべてがひとつになって、この場所だけの景色をつくってくれました。
花は、言葉にならない想いを咲かせる。
そんなことを、改めて感じたオーダーでした。
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